「PER・PBR・ROE って、名前は似ているけど何が違うの?」 「PER は 何倍なら割安 で、何倍なら割高 なのか知りたい」
配当株を選ぼうと四季報や証券会社のスクリーナーを開くと、必ず並んでいるのがこの3つの株価指標です。どれも重要なのですが、役割がそれぞれ違うため セットで使わないと本当の姿が見えてきません。
この記事では、配当投資をはじめて1〜2年の方に向けて、PER・PBR・ROE の 計算式・目安・配当投資での使い方 を、具体的な計算例を添えながら整理します。あわせて、2023年の東京証券取引所による PBR 改革 が配当投資家にもたらしている追い風についても触れます。執筆時点は2026年4月です。
まず結論:3指標は役割が違う。配当投資ではセットで使う
細かい話に入る前に、本記事の結論をまとめます。
- PER(株価収益率) = 株価 ÷ EPS。利益の何年分で株価が回収できるか
- PBR(株価純資産倍率) = 株価 ÷ BPS。解散価値に対して株価が何倍か
- ROE(自己資本利益率) = 純利益 ÷ 自己資本 × 100。株主の資本をどれだけ効率的に使えているか
- 3指標には PBR = PER × ROE という関係式がある
- 配当投資では、低PER × 低PBR × 高ROE × 適度な配当利回り が理想的な組み合わせ
- ただし、どの指標も 単独では判断材料として不十分。業種平均・推移・事業内容まで見ること
PER・PBR は「価格の物差し」、ROE は「稼ぐ力の物差し」です。配当投資家は 価格が割安で、稼ぐ力もある企業 を探したいので、両方を組み合わせて使うのが基本になります。
PER(株価収益率)とは — 利益の何年分で株価を回収できるか
計算式と意味
PER(倍) = 株価 ÷ 1株あたり純利益(EPS)
株価が「企業の1年分の利益」の何倍の水準にあるかを示す指標です。言い換えると、今の利益水準が続くと仮定したとき、何年で株価の元が取れるか を表しています。
例えば PER 10倍なら「今の利益が続けば10年で株価分を稼ぎ出す」、PER 20倍なら「20年かかる」というイメージです。短いほうが投資家にとっては魅力的、つまり 低PER ほど割安 と見なされます。
PER の目安
| 水準 | 一般的な解釈 |
|---|---|
| 10倍以下 | 割安の目安 |
| 10〜15倍 | 標準的 |
| 15〜20倍 | やや割高 |
| 20倍以上 | 割高の目安(成長期待が強い) |
執筆時点では、日経平均の加重平均 PER は約17〜18倍 前後で推移しています。世界全体で見ると米国の S&P500 は20倍を超える水準にあることが多く、日本市場は相対的に低PERと言えます。
ただし、業種による水準差 が非常に大きい点は必ず頭に入れておきましょう。
- 銀行・商社・鉄鋼・海運など: 構造的に低PER(5〜10倍)
- 食品・医薬品・小売など安定業種: 中位(15〜20倍)
- IT・バイオ・グロース株: 高PER(30倍超もザラ)
「PER 8倍だから激安!」と飛びつく前に、その業種の平均水準 と比較する習慣をつけたいところです。
配当投資での PER の見方
配当投資の世界では、低PERの高配当株 は「安く買える配当株」として人気があります。理由はシンプルで、低PERの銘柄は株価が抑えられているぶん、配当利回りが相対的に高く出やすい からです。
配当利回りの計算については、配当利回りの計算方法と目安をやさしく解説 でも詳しく扱っています。
PBR(株価純資産倍率)とは — 解散価値に対して株価が何倍か
計算式と意味
PBR(倍) = 株価 ÷ 1株あたり純資産(BPS)
「会社が今すぐ解散して資産を全部売り払った場合の価値(解散価値)」に対して、株価が何倍になっているかを示す指標です。
- PBR 1倍 = 市場が会社の解散価値とちょうど同じ評価をしている
- PBR 1倍超 = 市場が解散価値より高い評価をしている(将来利益への期待料が乗っている)
- PBR 1倍未満 = 解散価値以下の評価=割安の可能性(ただし理由があるケースも)
つまり PBR 1倍は、投資判断の 一つの心理的な節目 になっています。
2023年、東証が PBR 1倍割れ企業に改善要請
2023年3月、東京証券取引所はプライム市場・スタンダード市場の全上場企業に対し、「資本コストや株価を意識した経営」の開示 を要請しました。中でも特に注目されたのが、PBR 1倍割れ企業への改善要請 です。
これは「解散価値より株価が低い=市場が価値を感じていない状態」を放置せず、企業に自覚と行動を促すものでした。結果として、
- 自社株買いの積極化: 2025年の自社株買いは過去最高ペース(年間20兆円規模の見込み)
- 増配・累進配当の宣言: 還元姿勢を打ち出す企業が急増
- 事業ポートフォリオの見直し: 収益性の低い事業の整理
といった動きが広がり、配当投資家にとっては 大きな追い風 となりました。累進配当の考え方については 連続増配株の魅力と日本・米国の代表銘柄 もあわせてどうぞ。
PBR の目安
| 水準 | 一般的な解釈 |
|---|---|
| 0.5倍未満 | 相当な割安だが理由がありそう |
| 0.5〜1倍 | 割安圏。東証改革の対象ゾーン |
| 1〜2倍 | 標準〜やや高めの評価 |
| 2倍以上 | 成長期待や無形資産評価が高い |
低PBRの銘柄は「安く買える配当株」として注目されがちですが、低いのには低いなりの理由 があることも多いので、事業内容や業績推移を必ず確認しましょう。
ROE(自己資本利益率)とは — 株主資本をどれだけ効率的に使えているか
計算式と意味
ROE(%) = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
株主から預かったお金(自己資本)を使って、1年間でどれだけの利益を生み出したかを示す 効率性の指標 です。
例えば ROE 10%なら、「100万円預けたら、その年に10万円の利益を生み出してくれた」というイメージです。預金金利と同じ感覚で捉えるとわかりやすいでしょう。
ROE の目安と国際比較
| 水準 | 一般的な解釈 |
|---|---|
| 5%未満 | 低水準。資本効率に課題 |
| 8%以上 | 優良水準(日本市場での目安) |
| 10%以上 | 優秀水準 |
| 15%以上 | トップクラス |
国別平均は以下のような水準感です。
- 米国平均: 約20%(S&P500、2024年実績)
- 日本平均: 約9%(TOPIX500 ベース)
日本企業の ROE が相対的に低い要因としては、自己資本を潤沢に積み上げる傾向(内部留保の厚さ)や、利益率の低さなどが挙げられます。ただし、2023年以降の東証改革で ROE 改善を意識する企業も増えており、10%以上を中期目標に掲げる企業 も一般的になってきました。
配当投資での ROE の見方
配当投資家にとって ROE が高い企業は、以下の点で魅力があります。
- 長期で増配しやすい: 稼ぐ力が高いと、配当の原資(利益)が増え続けやすい
- 配当性向を上げる余地がある: 利益が多ければ配当を厚くしても持続可能
- 株主資本の積み上がりが速い: BPS が増え、将来的な PBR 改善にもつながる
配当性向とのセットで考える視点は、配当性向とは — 高すぎる/低すぎるの見極め方 でも詳しく解説しています。
ROE が高いからといって手放しで喜べない理由
ROE が異常に高い企業は、借金(負債)で自己資本を薄くしている 可能性があります。自己資本比率が低いと、景気後退局面で財務が一気に悪化しやすく、減配・無配リスクも高まります。
ROE を見るときは 自己資本比率 とセットで確認する、というのがセオリーです。
3指標の関係式 — PBR = PER × ROE
ここまで読まれて「3つって、結局バラバラの指標なのでは?」と思った方もいるかもしれません。実は、この3指標は 1つの式で結ばれています。
PBR = PER × ROE
証明も単純です。
- PER = 株価 ÷ EPS
- ROE = EPS ÷ BPS(※ROEは純利益÷自己資本なので、1株ベースに直すとEPS÷BPS)
- PER × ROE = 株価 ÷ EPS × EPS ÷ BPS = 株価 ÷ BPS = PBR
つまり、PBR は「価格の倍率(PER)×稼ぐ力(ROE)」で決まる、という関係になります。
関係式から読み取れること
この式を使うと、3指標の組み合わせを タイプ分け できます。
| 組み合わせ | 典型例 | 配当投資での評価 |
|---|---|---|
| 低PER × 低ROE = 低PBR | 成熟産業・構造不況業種 | 割安だが稼ぐ力が弱い |
| 高PER × 高ROE = 高PBR | 成長株・グロース株 | 割高だが稼ぐ力強い |
| 低PER × 高ROE = 適正PBR | 理想形 | 安く買えて稼ぐ力あり |
| 高PER × 低ROE = 高PBR | 期待先行・バブル気味 | 要警戒 |
配当投資の視点では、低PER(安く買える)× 高ROE(稼ぐ力) の組み合わせがベストです。PBR が 1〜1.5倍程度に収まっていて、そこに適度な配当利回りが乗っていれば、バランスの取れた銘柄と言えます。
配当投資での3指標の見方 — 一覧表
配当投資で使う主要指標を、一覧で整理しておきましょう。
| 指標 | 低い方が良い場合 | 高い方が良い場合 | 目安 |
|---|---|---|---|
| PER | 割安(低PER) | — | 15倍以下 |
| PBR | 割安(低PBR) | — | 1倍前後 |
| ROE | — | 稼ぐ力(高ROE) | 8%以上 |
| 配当利回り | — | 配当が多い | 3%以上 |
| 配当性向 | 余裕あり | 株主還元強い | 30〜70% |
| 自己資本比率 | — | 財務健全 | 40%以上 |
PER・PBR・配当利回りは「低いほど割安」系、ROE・自己資本比率は「高いほど健全」系、配当性向は「ほどよい水準」系、というのが大まかな覚え方です。
指標だけで判断しない — 「なぜ?」を必ず考える
ここまで目安を並べてきましたが、指標の数値だけで決めつけるのは危険 です。必ず「なぜその数値になっているのか?」を考える癖をつけましょう。
PER が低い理由
- 業績悪化の先取り: 来期の利益減少を市場が織り込んでいる
- 業種特性: 銀行・商社・海運など、構造的に低PERになる業種がある
- 不人気・低流動性: 機関投資家が買いにくい銘柄
PBR が低い理由
- 資産の質が低い: 古い設備・回収見込みの薄い売掛金・不稼働不動産
- 成長性がない: 将来利益が期待できないと市場が見ている
- ガバナンス不安: 大株主の壁、親子上場、外国人持ち株比率の低さ
ROE が高い理由
- 実力での高収益: 高利益率・資本効率の高いビジネスモデル
- レバレッジ: 借金で自己資本を薄くしているだけの可能性
- 自社株買いの効果: 自己資本を圧縮することで機械的にROEが上がる
どの指標も「数値の裏にあるストーリー」を読むことで、初めて投資判断に使える情報になります。
2023年東証改革の影響 — 配当投資家にとっての追い風
少し広い視点で、日本市場全体の構造変化 にも触れておきます。
東証の改善要請と企業の反応
前述のとおり、2023年3月の東証による PBR 1倍割れ改善要請は、日本市場の大きなターニングポイントとなりました。企業は「資本コストや株価を意識した経営」を迫られ、次のような動きが加速しています。
- 自社株買いの拡大: 2025年の自社株買いは年間20兆円規模の見込みで過去最高ペース
- 配当性向の引き上げ: 「配当性向30%以上」「累進配当」を宣言する企業が急増
- DOE(株主資本配当率)の導入: 利益変動に左右されない安定配当の約束
- 政策保有株の縮減: 持ち合い株の売却と、得た資金の株主還元への回帰
配当投資家にとっての意味
これらの変化は、配当投資家にとって 純粋な追い風 です。
- 増配企業が増えることで、長期保有での受取配当額が伸びやすい
- 自社株買いで発行済株式数が減れば、1株あたり配当(DPS)が構造的に上がる
- PBR 1倍割れの優良企業が見直され、割安・高配当の銘柄が発掘しやすい
減配リスクをどう考えるかについては、減配リスクの見抜き方と配当投資の心構え でも詳しく扱っていますので、あわせて読んでみてください。
配当投資で3指標を使うステップ — 実践編
では、実際に銘柄を選ぶときに、これら3指標をどう使えばよいのでしょうか。おすすめは以下の4ステップです。
ステップ1: スクリーニング(絞り込み)
証券会社のスクリーナーで、以下の条件を設定します。
- 配当利回り: 3%以上
- PBR: 1倍以下(または1.2倍以下)
- ROE: 8%以上
- PER: 15倍以下(必須ではない)
この条件だけで、割安 × 稼ぐ力 × 配当あり の3拍子が揃った銘柄に絞り込めます。
ステップ2: 健全性の確認
絞り込んだ銘柄について、財務の健全性をチェックします。
- 配当性向: 50%以下(100%超は要警戒)
- 自己資本比率: 40%以上
- 営業利益率: 業種平均以上
ここで「利益の質と財務の余力」を確認することで、ROE の高さが見かけ倒しではないかを見極められます。
ステップ3: 継続性の確認
単年だけでなく、5〜10年の推移を見ます。
- 連続増配 or 累進配当 の実績
- 減配履歴(リーマンショック・コロナショック時など)
- PER・PBR・ROE の推移 が極端にブレていないか
継続性があることは、長期保有を前提とする配当投資家にとって何より重要です。
ステップ4: 定性判断
最後に、数字では測れない要素を確認します。
- 事業モデル: 安定的にキャッシュを生み出せるビジネスか
- 業界地位: シェア・ブランド・参入障壁
- IR姿勢: 中期経営計画・配当方針・株主との対話の質
この4ステップを踏めば、数字の背後にあるストーリーまで理解したうえで、自分の納得できる銘柄選びができるようになります。
具体的な計算例 — 架空A社で手を動かしてみる
最後に、具体的な数字で3指標を計算してみましょう。架空のA社を想定します。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 株価 | 3,000円 |
| 1株純利益(EPS) | 250円 |
| 1株純資産(BPS) | 2,500円 |
| 1株配当 | 100円 |
このデータから各指標を計算します。
- PER = 3,000 ÷ 250 = 12倍
- PBR = 3,000 ÷ 2,500 = 1.2倍
- 配当利回り = 100 ÷ 3,000 × 100 = 約3.33%
- 配当性向 = 100 ÷ 250 × 100 = 40%
さらに、A社の自己資本が1株あたり2,500円、純利益が250円ということは、ROE = 250 ÷ 2,500 × 100 = 10% となります。
解釈
- PER 12倍: 市場平均17〜18倍より割安。悪くない水準
- PBR 1.2倍: 平均的。解散価値に少し上乗せ程度
- ROE 10%: 優秀水準
- 配当利回り 3.33%: 標準的な高配当株ゾーン
- 配当性向 40%: 健全な還元水準、増配余力もある
関係式でも検証してみましょう。
- PBR = PER × ROE = 12 × 0.10 = 1.2倍 ← 計算と一致
A社は 割安・稼ぐ力あり・配当も妥当・増配余力あり というバランスの良い銘柄、と判断できそうです。もちろん、これに加えて「事業内容」「業種平均との比較」「過去の増配履歴」などの定性情報で最終判断をする、という流れです。
株価指標の限界 — 過信しすぎないために
最後に、3指標に共通する 限界 も押さえておきましょう。
1. 過去データが基本
PER・PBR・ROE はいずれも、過去の財務データ から計算されます。未来の業績を保証するものではなく、来期の利益が落ちればあっという間に PER は跳ね上がります。
2. 業種比較が必須
何度も書いていますが、業種ごとの標準水準 が違うため、絶対値だけで判断すると誤ります。銀行株の PER 8倍と IT 株の PER 8倍は、意味合いがまったく違います。
3. 単独では判断危険
- 低PER だけ: バリュートラップ(万年割安)の可能性
- 高ROE だけ: レバレッジ頼みの脆弱な収益体質の可能性
- 低PBR だけ: 資産の質が悪い・成長性が乏しい可能性
必ず 複数指標の組み合わせ + 推移 + 業種比較 + 定性情報 で判断しましょう。
4. 質的情報が不可欠
数字は強力な武器ですが、経営者の姿勢・業界のトレンド・競争環境 といった質的情報を無視しては、本当に長く付き合える銘柄にはたどり着けません。有価証券報告書やIR資料、決算説明会の動画などにも、できるだけ触れてみましょう。
まとめ
本記事のポイントを振り返ります。
- PER = 株価 ÷ EPS。利益の何年分で株価が回収できるか。15倍以下が割安目安
- PBR = 株価 ÷ BPS。解散価値に対する株価倍率。1倍が節目
- ROE = 純利益 ÷ 自己資本 × 100。資本効率の指標。8%以上が優良、10%以上が優秀
- PBR = PER × ROE の関係式で3指標は結ばれている
- 理想は 低PER × 高ROE(=適正PBR)× 適度な配当利回り
- 2023年東証改革以降、自社株買い・増配・累進配当が全体的に強化 されている
- 指標は 単独で使わず、業種平均・推移・定性情報と組み合わせる
PER・PBR・ROE は、配当投資をする上で避けて通れない基本中の基本です。最初は「なんとなく難しそう」と感じるかもしれませんが、計算式そのものは四則演算 ですし、関係式(PBR = PER × ROE)を一度理解すれば、3つが1本の線でつながります。
スクリーナーを眺めるときに「低PER か? 高ROE か? PBR はどうか?」と頭の中で自動的にチェックできるようになれば、配当投資家としての視野は一気に広がります。
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PER・PBR・ROE を理解して良い銘柄を選べたとしても、保有後に配当がどう推移しているか を手作業で追うのは意外と面倒です。
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